大阪大学 大学院基礎工学研究科の研究者らは、プロジェクタで投影した像を手などで遮っても影ができないインタラクティブ・プロジェクションマッピングシステム「ShadowlessProjector」を発表しました。
論文:再帰透過光学系による空中像投影を用いた影なしプロジェクションマッピングの試み
著者:Kosuke Hiratani, Daisuke Iwai, Kosuke Sato / 平谷 光佑, 岩井 大輔, 佐藤 宏介
左が通常のプロジェクタで直接投影した時の様子。右が本提案手法で投影した様子
本論文は、空中像を結像することのできる光学系「再帰透過光学系」を大口径レンズと見立て、空中像を投影することで影の生じにくいインタラクティブ・プロジェクションマッピングシステムを提案します。
通常、プロジェクタによる投影は、レンズの口径が小さいために手などの遮蔽物で簡単に投影光を遮ることができ、投影対象物体上に本影が発生します。そこで本提案手法では、本影の発生を無くすため、再帰透過光学系を用いた投影アプローチを採用します。
再帰透過光学系とは、素子面に入射した光線に関して、面内方向での再帰性と法線方向への透過性を持つ光学素子であり、光源と面対称な位置に実像を形成することができます。
本提案手法では、再帰透過光学系の一種であるASKA3Dを用います。ASKA3Dは、微小なミラーアレイが直交するように2層重ねた構造になっており、入射光がそれぞれの層で1回ずつ反射することで、ASKA3D面に関して対称な位置に空中像が結像されます。
本提案システムは、ASKA3Dを中心に面対称な位置に投影対象(ターゲット)と、同形状の白色物体(ダミー)を配置します。
ダミーに投影された像は、ASKA3Dを通して面対称位置にあるターゲット上に現れます。
ターゲット上の像は、ASKA3D内の多数のミラーで反射した光線に由来するので、ASKA3Dとターゲットの間を手などで遮っても、従来の投影において発生するような本影は発生せず投影することが可能となります。
これは、すべての光線を遮らない限り像は失われず、光量の減少の結果として半影が現れるためです。つまり、光線を手で一部遮っても本影が発生しないということです。
また、面対称位置でのみ結像するため、遮蔽物上に像が現れにくく、投影方向を感じさせません。さらに、タッチ検出も可能で、ターゲットに赤外光を当てることで、ターゲットに触れた位置のみ検出することもできます。