明治大学の研究チームは、手袋型デバイスを着用することで、人差し指部に取り付けられている電極から金属製の食器、または手づかみで食べる食品を介して、舌に電気味覚(味覚器に電気刺激が加わることで生じる味質変化のこと)を付与する手法を発表しました。
論文:あらゆる金属製食器を電気味覚提示に用いる手袋型デバイスの試作
Prototyping of glove that turns metallic tableware into electric taste devices
鍜治慶亘 / Yoshinobu KAJI(明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科)
宮下芳明 / Homei MIYASHITA(明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科)
ヴァーチャルにおいて味覚再現や食品の味覚制御を行う研究で電気味覚が応用されていますが、本論文はそんな電気味覚を手袋だけ装着して金属製食器や手づかみで食べる食品から舌に電気味覚を付与するアプローチを提案します。以前の電気味覚研究としては、
- 無限電気味覚ガム:圧電素子の咬合を用いた口腔内電気味覚装置(噛んで発電して電気味覚を付与。電池やケーブルなしで、口腔内で完結の装置)
- 一極型電気味覚付加装置の提案と極性変化による味質変化の検討(飲食物を介して電気刺激を出力し味覚器に提示する方法)
- 顎部電気刺激による味覚提示・抑制・増強手法(顎部に電極を貼り電気刺激を加えることで味覚を提示する手法)
他にもありますが、以上のように舌への直接電気刺激、食品を介しての電気刺激、人体への直接電気刺激など、多くの電気味覚を付与する研究が行われてきました。しかしながら、装置を噛んだり、専用の食器型デバイスを複数作成したり、顎に電極を貼り付けたりと不自然さが残ります。本研究は、手袋さえはめれば食器の制限を受けず、手づかみで食するものに対しても効果を発揮する、これまでの不自然さを緩和するアプローチを提案します。
本提案は、手袋の指先(人差し指の外側及び小指の内側)に電極を配置し、手の甲に電源を装備したデバイスを使用します。使用時は、手袋で金属製の食器や食品を持ち食べるだけで電気味覚が付与されます。具体的には、手人差し指部より金属製の食器及び飲食物を介し、小指部から人体を介すことで回路を形成し、舌に電気味覚を発生させます。
ON・OFFの切り替えは、人差し指をつけたり離したりすることで変更でき、また食品を持つ位置を変えることで、抵抗値が変わり味変化のインタラクションが可能です。
実験では、金属製のスプーン、フォーク及びコップを介して市販食品を試食し、また手づかみで食すバナナも試行し、飲食物に電気味覚を付与できることを実証しました。これにより、食器自体を改造することなく、複数の食器でも持ち替えるだけで電気味覚を付与でき、加えて手づかみで食事をする際にも電気味覚の付与を可能にします。将来的には、手袋の小型化として、電源部を小さくすることで指サックや指輪のようなアクセサリなど、より自然な形を検討します。