東京大学、半球ドーム装置を用いて映像投影でVR体験を提供するシステムを発表。仮想と現実の切り替えや、仮想体験時に現実とのやり取りも可能

東京大学大学院情報学環 暦本研究室の研究者らは、半球ドーム装置を用いてVR体験を提供するシステム「CompoundDome」を発表しました。

論文:CompoundDome: スクリーンを部分的に透過することにより現実世界とインタラクションを可能にする装着型ドーム装置

著者:丸山英梨子, 暦本純一

(a)投影中の本システムの外観。(b)投影していない状態の本システムの外観

本論文は、ドーム状の装置を装着し、プロジェクタから装着者の視界を覆うようにドームに映像を投影することでVR体験を生成するシステムを提案します。

システムは、装着者の視界前方を覆うような半球のドーム(直径600mm、重さ1,2kg)、プロジェクタ、プロジェクタ先の広角レンズ、制御用コンピュータ(MacBook Pro)、加速度センサとしてiPod touch、Webカメラで構成されています。クリーン用塗料を、マスキングシートを用いてアクリル製のドームに2mm幅、2mm間隔のドット状に描画し、メッシュスクリーンを作成します。

システムの構成図

スクリーン用の塗料は黒色で、プロジェクタのRGB三原色の波長には反射する性質の素材を使っています。投影していない場合は、黒色のメッシュよりも外側の風景の視認性が高いので、外の現実世界が見ます。一方、スクリーンに映像を投影すると、映像の高い輝度の反射により外の景色は見えなくなり、VR体験がでるという、装着した状態で部分的に仮想と現実の空間を切り替えることが可能になります。

(a)投影していない状態。(b)映像投影時

例えば,利用者の周囲に人がいる場合はその人の部分だけ現実空間が見えてコミュニケーションが取れたり、歩行する場合は足元の部分が透けてみえるなど、行動やアプリケションに合わせて現実の空間が透けて見える領域を自在に設定することが可能です。

また、ドームの内側に向けられたWebカメラにより装着者の顔を撮影することで、遠隔会議や仮想空間内に利用者の顔を反映させることも可能です。

(a)映像が投影されている部分では、装着者と遠隔地の人はお互いの顔が見え、周囲の人は装着者の見ている仮想空間が見える。(b)映像を投影していない部分では、装着者と周囲の人はお互いの顔を見て話すことができる。

そして、システムに肌が触れないため、髪の毛や化粧が崩れる心配、他人が密着で装着した機材を装着する心配もありません。加えて、広視野体験(本システムの視野角は、約160°)、VR酔いの軽減も享受できます。

これにより、既存のVRヘッドマウントディスプレイにおける装着性の課題や視野角の課題、VR酔いの課題を解決しつつ、遠隔含めた現実と仮想の世界でのコミュニケーションを実現します。

 

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