宇都宮大学山本研究室とニコンの研究者らは、何もない空中にライトフィールド映像を拡大投影する技術を発表しました。
論文:A Device for Reconstructing Light Field Data as 3D Aerial Image by Retro-reflection
著者:Kengo Fujii, Kazuki Shimose, Clément Trovato, Masao Nakajima, Toru Iwane, Masaki Yasugi, Hirotsugu Yamamoto
所属:Utsunomiya University, Nikon Corporation
ライトフィールドカメラは、カメラのレンズと撮像素子の間に小さなレンズ列を取り付けることで昆虫の複眼のように映像を撮影する技術です。光が入射する位置と向きを記録できるため、図1のように、異なる方向から見た映像を再現可能です。
この技術では、ライトフィールドカメラの光学系を逆にする光学系を考えます。カメラの撮像素子をフラットディスプレイに置き換えて、レンズアレイを載せて、カメラレンズの代わりに投影レンズを使えば、ライトフィールドカメラで記録された光線を逆方向に再生できることになります。
ところが、このままでは空中の映像を観察できません。スクリーンなしに空中にプロジェクターで投影することと同じで、画像の一部しか眼に入らないからです。そこで、提案技術では、再帰反射による空中結像(AIRR: aerial imaging by retro-reflection)を導入します(図2)。
投影レンズから出た光はハーフミラーを透過して遠くに置かれた再帰反射シートに入射します。再帰反射シートは、交通標識やライフジャケットに使われているように、光を入射方向に逆向きに返す反射シートです。したがって、再帰反射シートに入射した光は逆向きに進むため、ハーフミラー側に戻ります。ハーフミラーで反射された光は、投影レンズの空中像をつくることになります。要するに、ライトフィールドカメラで撮影する際にカメラのレンズの前で見た3Dシーンが再現されます(図3)。
投影の光源を高輝度にして光学系を大型化すれば、映画で描かれたような3D映像の空中映像が可能になります。