東京工業大学の研究チームは、手を覆うように構成された装置からLEDの光で温覚を再現するVR向け非接触型温覚提示装置を発表しました。
論文:Contactless warmth display using visible light LED for HMDVR
HMDVR のための可視光LED による手への非接触型温覚提示
著者:Akihiro Sakai, Tsutomu Yamaguchi, Hironori Mitake and Shoichi Hasegawa
界 瑛宏, 山口 勉, 三武 裕玄, 長谷川 晶一
所属:Tokyo Institute of Technology
東京工業大学
本論文は、VRコントローラ(Oculus Touchを使用) の周囲に手に触れないように配置したLEDからの可視光出力により、触覚を伴わずに温覚を提示する触覚装置を提案します。
装置は、手を囲むように六角形状のフレームで構築され、内側に12枚のLEDを配置します。LEDの放熱を行うため、ファン付きヒートシンクをその上部に取り付けます。LEDは高出力なため、目に入らないように装置の隙間を黒いテープで塞いだり、手を入れる部分も伸縮性の高い布を取り付け外部に漏れないようにします。また、高温状態のLEDに直接手が触れることのないようアクリル板をLEDの光照射部の前に設置します。
実験では、1枚のLEDによって皮膚温が1~3℃ほど上昇することを実証しました。またDuty比を調整することにより温度上昇の速度を調整できることが分かり、温かさと熱さの感覚を提示できることも実証しました。加えて、LEDを照射し続けても温度は42℃程度で止まり、やけどの危険性を回避できることも分かりました。これはLEDによって温められた熱が血流などによって運ばれることにより、冷まされていることが考えられます。
デモでは、炎、温泉、毛の柔らかい動物の体験が提示されました。これは、輻射、形の無い水による温覚、触覚が少ないと思われる細い毛による温覚の再現を意図しています。
炎と温泉のデモに対しては実際に手を近づけたときに近い感覚を得ることができたという意見が多かった一方で、動物のデモでは、熱すぎるといった意見や、温かさよりもふもふとした触感のほうがほしいという意見が多かったとのことです。今後は手のひらなど今回提示できなかった部位への温覚提示や触感を伴う温覚の提示、非接触な冷覚提示についても検討したいとします。