筑波大学の研究チームは、奥行き感のある仮想オブジェクトのリアルタイムレンダリングを維持しながら、大きなアイボックスを実現するホログラフィベースのARニアアイディスプレイ技術「Eholo glass」を発表しました。
論文:Eholo glass: Electroholography glass. A lensless approach to holographic augmented reality near-eye display
著者:Chun Wei Ooi, Naoya Muramatsu, Yoichi Ochiai
所属:University of Tsukuba
本論文は、CGH(Computer generated holography)を用いて、電子ホログラムによる奥行き感の提示が可能なARニアアイディスプレイ技術を提案します。一般的なホログラムは、実物体に対してレーザ光を当て、3次元の立体像を平面に記録し再生します。一方、CGHは実物体を必要とせず、記録の過程をコンピュータで計算することでホログラムをシミュレートし再生します。
そんなCGHを大きなアイボックスとコンパクトでシンプルな光学系で見るために、DCRA(Dihedral Corner Reflector Array)とレーザ光源、空間光変調器(SLM)、そして多層ビームスプリッタを組み合わせて使用します。またRGBそれぞれのレーザ光源を使用することで、カラー表示も可能になります。
DCRAとは、直角に合わせた立て鏡を多数配列させたマイクロミラー群からなるアレイで、二面コーナーリフレクタアレイとも呼ばれ、空中像システムなどに用いられてきました。同研究チームではDCRAのHMD用途への応用に力を入れており、これまでにも多様な構成を提案しています。
アイピースには”SASHIMI”と呼ぶビームスプリッタを多層に配置したプレートを配置します。 ビームスプリッタはプレート内で45°に傾けられ、DCRAによって転写されたCGHを目に届けます。
これにより、CGHによる奥行き感の提示が可能な仮想オブジェクトのリアルタイムレンダリングを、装着できるほどコンパクトにすることが可能な構成で実現します。プロトタイプでは40mmの大きなアイボックスが実現されており、異なる奥行きに仮想物体を配置した3840×2160解像度のCGHを30Hzでリアルタイムにレンダリングすることを実証しました。
上画像は、本プロトタイプをカメラでのぞきながらピントを変えた時の見え方の違いを示しています。120mm離れた手前と奥の柱の位置に、CGHによってティーポットを配置しています。左が手前の柱に焦点を合わせたケースで、右が奥の柱に焦点を合わせたケースを示しています。それぞれの柱と同じ奥行き位置にティーポットが見えます。赤い枠は、アイボックスの範囲を表しています。