スタンフォード大学の研究者とサンディア国立研究所の研究者たちは、ニューラルネットワーク・コンピューティング向けの高性能で低エネルギーな新たな「Artificial Synapse(人工シナプス)」を開発したことを発表しました。
ニューラルネットワークとは、人間の脳の仕組みや機能をコンピュータで再現しようとするモデル(人の神経を模したネットワーク構造のこと)です。
今回の「人工シナプス」は、実際の脳内にあるシナプスのように機能し、ニューラルネットワーク・コンピューティングをサポートする設計可能な有機電子デバイスです。デバイスは、主に水素と炭素の有機材料で構成されています。
実際の脳の構造を見ていきます。実際の脳というのは、発生した電気信号を脳内ニューロンの結合間に送ります。この結合部分をシナプスと呼び最初に通過するときに最も多くのエネルギーを必要とする箇所で、その後、毎回の接続に必要なエネルギーは少なくなります。
これは、シナプスが効率的に何か新しいことを学び、学んだものを覚えていることが効率化を促進する要因になっています。そして、今回の新たな「人工シナプス」は、他とは異なり、これら2つのタスクを同時に実行しエネルギーを大幅に節約することを可能にしました。
情報を別々に処理してメモリに格納する従来のコンピューティングに比べ、大幅な省エネルギーであると主張します。
今回の共同執筆者であるオランダ:アイントホーフェン工科大学のYoeri van de Burgt助教授はこう述べます。
「ディープ・ラーニング・アルゴリズムは非常に強力ですが、プロセッサを使用してシミュレートし、それらを別の場所に格納することはエネルギーと時間の面で非効率的です。私たちの仕事は、ニューラルネットワークをシミュレートするのではなく、代わりにニューラルネットワークを作成しようとしているのです。」と。
また、今回の「人工シナプス」を使用しテストした結果も発表しました。テストは、0から9の数字の手書きを認識する画像識別テストで、3つのデータセットでテストしたところ、シミュレートされた配列は手書きの数字を93〜97%の精度で識別できたと報告しました。
脳波コントロールの改善にも
また、脳波でデバイスを動かす「ブレイン・マシン・インタフェース」の改善につながる可能性もあると報告しました。