NVIDIA研究者など、解像度を維持したままARヘッドセットの視野を100°にする技術「ダイナミックフォーカスAR」を論文で発表。焦点距離を変えることが可能な「メンブレンミラー」を使用

UNC、MPI Informatik、NVIDIA、MMCIの研究者らは、焦点距離を変えることが可能(バリフォーカル)な「メンブレンミラー」を使用してARヘッドセットにおいて解像度を維持したまま視野を100°まで広角にできる新ディスプレイ技術「Dynamic Focus AR(ダイナミックフォーカスAR)」を論文にて公開しました。

論文:Wide Field Of View Varifocal Near-Eye Display Using See-Through Deformable Membrane Mirrors(PDF)

理解するために

構造を理解するにあたって人間の眼がどのような構造になっているかを簡単に理解してみます。まず、人はカメラのレンズみたいな働きをしている水晶体を薄くしたり分厚くしたりを筋肉で調整することで、遠くにピントを合わせたり近くにピントを合わせたりを実行しています。「accommodation」と呼びます。

また、近くのものを見ると眼球が内側に寄り目になり、遠くだとまっすぐ向く現象「輻輳」も同時に行っています。この「accommodation」と「輻輳」を同時に行い、オブジェクトの距離など奥行きを自然に把握することを可能にします。「ダイナミックフォーカスAR」では、両者の絶妙な相関関係を実現することで再現を目指します。

メンブレンミラー

現在のVR/ARヘッドセットの場合、片目ずつ異なる映像を映し出せることもあり、遠くのオブジェクトを見ようが近くのオブジェクトを見ようが、「accommodation」と「輻輳」を同時に使用せずとも静的画面からオブジェクトごとにどれだけ距離が離れているかを把握することができます。

しかし、人間というのは、近くを見ると奥行きがボヤけたり、反対に遠くを見ると近くがぼやけたりといった「accommodation」と「輻輳」を一緒に活用しています。そのため視野も広く解像度も高いという自然さが実現できますが、これを可能にしようと。

上記をデバイスで再現するためには、焦点力(焦点を合わせる力)を調整する方法が必要であり、今までのガラスまたはプラスチックの光学系では難しいのが現状です。そこで、ダイナミックフォーカスARではオンデマンドでレンズの曲率を調整できいつでも焦点力を変えることが可能な「メンブレンミラー」が最適ではないかと考えました。

アイトラッカーによって決定されたユーザーの固定距離に一致するaccommodationキューを提供することで、輻輳とaccommodationの不一致によって引き起こされる視覚的な不快感の問題(矛盾)に対処します。

深度距離は20cmから無限まで可能で、深度切り替えスピードは300ms(0.3秒)で実行します。

過去に同様のアプローチ(バリフォーカル・デザイン)がいくつか存在しましたが、解像度が下がったりなどのトレードオフが付いて回っていると述べ、「ダイナミックフォーカスAR」は解像度を維持したまま視野を100°まで広げることができたと提示しています。

正確なフォーカスと広い視野を提供することは、仮想世界と現実世界をシームレスに統合するHMDの最も重要な機能とも述べています。

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