電通大「梶本研究室」のVRに応用できそうな触覚研究6選。キスやソファを介した遠隔コミュニケーションや人工「胸キュン」装置等

先日、電気通信大学の梶本裕之准教授による「触覚とVR」をテーマにした模擬授業の映像をピックアップした記事を書きましたが、今回は梶本研究室による過去の触覚研究からVRに応用できそうと考えられる研究を恣意的に選択してみたいと思います。

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研究室のWebサイトでは、概要や論文へのリンクなどと一緒に過去の成果物を一覧で閲覧することができます。また、2016年版の研究室紹介動画も公開されています。

 

1.気配を感じさせる

[2007年]音響的な影の呈示による気配感覚の増強(pdf)

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視覚に頼らず現実世界で自分に近づく障害物の気配を感じさせる研究です。視覚障害者の気配知覚の先行研究から得た「気配の主要因」をベースにしています。

主要因とは、音の変化によって知覚しているというもので、障害物に近づくにつれてその方向からのノイズが小さくなるという障害物の反射音、遮音効果の影響をベースにしており、その要因を利用し、障害物方向からの雑音をリアルタイムに消去し気配を感じさせる錯覚デイバスを提案しました。

2.弾力を与える

[2009]周期的な前腕運動中における手掌部の皮膚感覚抑制による弾性物体把持錯覚の研究(pdf)

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動かしていないのに、類似した刺激を次々に与えることで運動があるかのように感じられる触錯覚というのが多数ありますが、その中で次のことを発見し実験したのが本研究です。

腕を上下に振る動作中に手のひらへ振動(オーディオ用アンプで増幅されスピーカーを使用)を与えると、腕の動作に合わせて手のひらでボールや低反発枕のような弾性物体が弾んでいるかのような錯覚が生じることを発見し、そんな複合錯覚を考察しました。

3.遠隔地でキスをする

[2010] 口腔における双方向コミュニケーションデバイスの開発(PDF)

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遠隔地にいる二人が、「接吻」をしている感覚を与える口腔での触覚コミュニケーションを可能とするデバイスを提案した研究です。

デバイスでは、水袋の「おしゃぶり」をベースとしており、口腔刺激子の膨張・収縮のみの1自由度の動きによる触覚提示を行います。一方が水袋を咥えると、一方が膨張するという仕組みで、双方向でやり合うというものです。

4.遠隔地でソファを共有する

[2010年]ソファを介した遠隔コミュニケーション(PDF)

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ソファの隣に他人が座ると振動や音などの情報からその人の存在を知覚できることに着目し、ソファを介した遠隔コミュニケーションの実現を目的とした研究です。

ソファには振動、変形、音響などの提示装置やセンサが内蔵され、センサによってユーザの動きを検出し、遠隔地のソファの提示装置によって伝える仕組みです。実験により、音よりも触覚の方がより効果があったなど、ソファベースの相互に情報交換しあう遠隔コミュニケーションの可能性を示唆した研究になりました。

5.人工的に胸キュンを発生させる

[2010年]胸部への触覚提示を用いた好意の生起(PDF)

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「胸キュン」を人工的に発生させることによって、人の好意を生起させることを目的とした研究です。

胸部にスピーカーを装着し、そのスピーカーから心拍と同期した振動を提示することで自分の身体の一部であるように感じ、振動に様々な変化を加えることによって「胸キュン」を再現することを試みました。

6.キャラクターへの好意を向上させる

[2012年]心戯一体:疑似心拍提示を用いた視聴覚コンテンツ体験の拡張(PDF)

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外部から心拍を模倣した振動を胸部に提示することによって、コンテンツ中の人物への好意を操作できるようなデバイスの開発を目的にした研究です。

人は好みの異性を目にしたとき、紅潮・発汗・心拍の上昇といった生理反応が起こることを利用し、触覚によって心拍状態の虚偽情報を提示することでコンテンツ内の人物への評価が向上するのではと。耳に脈拍センサを取り付け心拍数を計測、クッションに内蔵するスピーカーから出力し触覚的振動を与えます。

最後に

今回は6つの研究を厳選しましたが、他にもたくさんありますのでご興味がある方は一覧ページより確認してみてください。

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