NVIDIAのVRに最適化された新しいレンダリング技術「Simultaneous Multi-Projection」とは

先日、米テキサス州オースティンで開催されたイベントでNVIDIAの電撃発表がありました。発表の主題は4つ。

  • 新GPU「GeForce GTX 1080」「GeForce GTX 1070」の発表。(過去記事
  • ゲーム画面を3D360°含めキャプチャするカメラシステム「Ansel」(過去記事
  • VRにおけるリアルタイムの物理ベースアコースティックエンジン技術「VRWorks Audio」(過去記事
  • そして、VRに最適化された新しいレンダリング技術「Simultaneous Multi-Projection」です。

 

新レンダリング技術「Simultaneous Multi-Projection」とは

分かりやすくするため、2つの技術に分け、従来のレンダリングと比べました。

<1つ目の技術(Single Pass Stereo)>
  • 従来:VRヘッドセットは2眼で構成されているため、左目用の投射、右目用の投射が必要です。そのため、GPUではレンダリングパイプライン(3Dモデルから出力まで)を左目と右目それぞれ1回づつ合計2回まわして描画しています。つまり、VRヘッドセットはGPUで2回レンダリングパイプラインをまわして処理しています。
  • 新技術:それを、1回のレンダリングパイプラインで左目と右目2つ同時に処理し投射できるようにしました。
  • 結果:レンダリング効率がアップ。フレームレートが1.5倍ほど向上するそうです。

SMP

<2つ目の技術(Lens Matched Shading)>
  • 従来:VRヘッドセットは、左目用1つと右目用1つを横長長方形の平面に投射し描画します。ですので、裸眼で現実を見るときではありえない端っこ(外周)が間延びする歪み現象が発生します。圧縮して逆歪み描画で補正はしますが、それでも補正しきれず引き伸ばされたような箇所がレンズを通して見ると出てきてしまいます。
  • 新技術:左目用に4つの投射を一気にし、右目用にも4つの投射を一気にする。しかも平面投射ではなく、平面を十字に4分割して中心を奥にした立体的な投射をする。つまり、合計8個の投射を立体的に一気にします。
  • 結果:外周の圧縮し補正する必要がないため、余計なピクセル描画が減らせる。平面ではなく弯曲した描画ができる。

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まとめると、今までのGPUであればレンダリングパイプラインを2回まわして歪みある描画しかできなかったところを、1回のレンダリングパイプラインで8つ同時に投射し歪みなしで描画できると、ということです。

ちなみに、今回発表された新GPU「GeForce GTX 1080/1070」は、8つではなく1回に最大16個まで可能と述べています。実際には8つしか使いませんが、残り8つは今後の汎用性に対応するため余裕として残しているそうです。

今回の新たなレンダリング技術「Simultaneous Multi-Projection」がどのように16個というマルチ投射を可能にしたのか、その辺はブラックボックスですが、VRの描画において余計な事をしなくてよくなった効率化と、同時に性能を上げる事を実現したこの技術は、GTX 1080の発表でややインパクトが薄かったですが、今後の進化において長期的に見ると重要度は高いのかもしれません。

Simultaneous Multi-Projectionを発表した基調講演の公式映像はこちら

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