VRを使った軍事訓練システムなどを開発・販売している米フロリダ州オーランドベースのSerious Simulationsは、デスクトップPC向けVRヘッドセットの独自プロセッサを介したワイヤレス・ソリューションシステム「Reformatter」(特許出願中)に取り組んでいます。
ハイエンドVRヘッドセットに対して適したストリーミングビデオを低い遅延(レイテンシ)でワイヤレス送信できることを主張します。
同社は、これまでワイヤレスVRプロセッサを積んだ独自VRヘッドセットを開発、2016年2月に開催したUnity主催のVision VR/AR Summitでは「Reformatter」をOculus Rift DK2に適合させたことも発表しました。
同社のワイヤレス・ソリューションは、一般的に使われているWi-Fi(2.4/5GHz帯)ではなく、60GHz帯(ミリ波)の電波を使った高速の無線LAN規格「IEEE802.11ad」を利用することで実現しています。通称Wireless Gigabit(WiGig)とも呼ばれ、今はまだ実験段階で一般的にはまだ普及していないメソッドです。帯域幅最大6.8Gbpsまでカバーできるとして、理論的にはOculus Rift CV1でもワイヤレスを可能にするとしています。
ただし、同社創設者兼CEOのChris Chambers氏が言うには、60GHz帯を使っても17〜22ミリ秒の遅延は起きると述べています(有線Rift DK2でも同じくらいの遅延はあります)。同社はさらに高速にするため、独自ワイヤレスVRプロセッサを介したシステム「Reformatter」を開発します。それにより、PCからHMDの画面まで約17マイクロ秒でビデオフレームを提供するとします。これは標準的なフレームバッファリングよりも1000倍高速です。
このプロセスは、LCD、LED、OLED、AMOLEDの高解像度ディスプレイでも動作するとしています。
そして、これら独自VRヘッドセットや独自プロセッサは同社サイトで販売されています。デュアル1080pディスプレイ/視野角130°のワイヤレスVRヘルメットは7,500ドル、プロセッサ「Zero Frame Latency Wireless Video Formatter」は1,750ドル。両方とも日本から購入できるかは不明です。
ちなみに、同社はオープンソースバーチャルリアリティ(OSVR)のパートナーでもあります。
そして、今年販売される製品版Oculus RiftやHTC Viveなど高解像度・高フレームレートを保持しているハイエンドVRデバイスへ向けて、さらに強化した第2世代ボードも開発しており、2016年2月にはそのプロセスの特許も出願したとしています。Foveated Rendering(視線の中心だけを高解像度で描画することで負荷を低減させるアイトラッキング技術)に関しても、まだ適応していないが面白いアイディアで確かに考えられると、前向きな姿勢を示しています。